長野駅と善光寺を結ぶ参道界隈には、古き良き風情と近代思想が融合し、
心惹かれる美しい世界が生み出されていました。
創建より約1400年という歴史があり、「一生に一度は善光寺参り」と言われるほどの名刹として、国内外から多くの参拝者が訪れる善光寺。長野駅から善光寺本堂までの距離十八丁(約2km)は、阿弥陀如来の「弥陀の十八願」という教えに由来しています。こうした表参道や門前エリアは、そぞろ歩くだけでも心を惹かれる見所が満載。レトロな石畳に導かれるように歩むと、参道の両脇には39軒の宿坊(寺院に参拝する人や僧侶のための宿泊施設)が建ち並び、さらには白壁土蔵造りの街並の中、元は旅館だったという情緒あふれる郵便局、古民家をリノベーションした飲食店などに出会うことができます。こうした趣深い建物の中には国の登録有形文化財に指定されているものもあるほど。善光寺をお参りした際には、ぜひ参道散策でお気に入りのスポットを見つけてみましょう。
このエリアの象徴ともいえる「藤屋御本陳」さんを訪問させていただきました。
江戸時代の創業より、370年という歴史を継承する藤屋御本陳。
いつの世も街のランドマークとして、多くの著名人や地元の名士を魅了し続けてきました。
善光寺門前、御影石の石畳が美しい表参道にあって、ひときわ印象的な建物が、国の重要文化財にも指定されている藤屋御本陳です。御本陳とは、大名が参勤交代の際に宿泊した格式の宿のこと。藤屋御本陳は江戸時代に端を発し、加賀百万石前田家などの御本陳として歴史を刻んできたといいます。現在の外観が出来上がったのは1925年(大正14年)。国宝・善光寺仁王門の再生建築に指名された、越前宮大工・師田庄左衛門の手によって、アールデコの様式美を取り入れた、和魂洋才の建物に生まれ変わりました。さらに2006年(平成18年)春には大規模なリノベーションを実施。由緒ある建物に不易流行の美を伝える新たなモダニズムが注がれました。現在では、レストラン・結婚式場として最上級のおもてなしを継承しながら、街のランドマークにふさわしい存在感を放ち続けます。
大正14年(1925年)当時の藤屋御本陣
現在の藤屋御本陣
藤屋御本陳|THE FUJIYA GOHONJIN 〒380-0841 長野県長野市大門町80 tel:026-232-1241
※掲載の情報は2019年8月現在のものとなります。
訪れる人々を迎えるのは、細部にまでこだわったアールデコ調のデザイン。
けやき造りによるX型の大階段は、一見の価値あり。
一歩館内に入れば目の前に広がる、数奇屋造りと大正ロマンが融合したクラシカルな趣の空間。中でも館の至宝のひとつと言えるのが、X型の大階段。総けやき造りとし、手摺や笠木等の細部にまでこだわったアールデコ調のデザインに、職人の技が光ります。
ゆったりとソファにくつろぎながら、風情ある坪庭の眺めを楽しむことのできる「ザ・ラウンジ」。昼間はカフェとして、夜はバーとして利用することができます。
日本庭園の一角に建つ、レンガ造りの独立型セレモニーホール。ライムストーンを配し、柔らかな光と爽やかな滝の演出によって気持ちの良い雰囲気を創出します。
高さ7mもの開放感あふれる「ザ・グランドホール・タイキョク」。特注のシャンデリアと大正当時のデザインを復刻させたシャンデリアが灯すぬくもりの中、蔵造りの街並を眺めながら食事が楽しめます。
和洋折衷のアールデコ洋式が特徴的な玄関ホール。藤屋御本陳を象徴させるモチーフを表現した藤棚と善光寺の絵画は、大正13年に滝澤光閑の手によって描かれた逸品です。