手で福を招くポーズが愛らしく、商売繁盛や千客万来の縁起物として親しまれている招き猫。
現代の私たちにとって身近な存在ではあるものの、その種類や由来はご存じでしょうか。
例えば、どちらの手を上げているのかによって意味が変わります。
右手を上げている場合は「お金招き」で、左手を上げている場合は「人(客)招き」。
中には欲張って両手を上げた招き猫もありますが、万歳をする姿がお手上げのように見えることから、敬遠されることもあるようです。
上げている手の高さにも意味があり、手が長く伸びているほど遠くの福を、短いほど身近な福を招くとされています。
では、招き猫の由緒とは? 実はその発祥には諸説あり、正確にはわかっていません。
数ある諸説の中でも有力な一つが、東京都世田谷区の豪徳寺を発祥とする説です。
今回は、たくさんの「招福猫児(まねきねこ)」に会うべく、豪徳寺まで足を運んでみました。
一匹の猫が、お寺に殿様を招き入れたことがはじまり
東急世田谷線「宮の坂」駅から徒歩5分、または小田急線「豪徳寺」駅から徒歩15分に位置する豪徳寺は、彦根藩主・井伊家の菩提寺でもあり、井伊家ゆかりの文化財が数多く所蔵されている曹洞宗の寺院です。
豪徳寺にまつわる招き猫の由来は、江戸時代初期に遡ります。ある日、彦根藩主の井伊直孝が鷹狩りの帰りにこの地を通りかかった際、門前にいた猫に手招きされました。手招きされるままお寺に立ち寄って過ごしていると、突然雷が鳴って雨が降り始めます。猫のおかげで雷雨を避けることができ、和尚との話も楽しめた直孝は、その幸運にとても感動したそうです。このご縁をきっかけに、井伊直孝の支援によってお寺は再興することができました。
その後、豪徳寺では、福を招いた猫を「招福猫児(まねきねこ)」と呼び、お祀りする招福殿が建てられました。招福殿は今もなお、家内安全、商売繁盛、開運招福を願う多くの参詣者が訪れるスポットとなっています。
招福殿の脇に設けられた奉納所には、大小様々な招き猫がずらり。寺務所で購入することができます。
豪徳寺に残る招福猫児(まねきねこ)の由来。井伊直孝と猫との出会いが縁で、豪徳寺は井伊家の菩提寺となりました。
山門を入ってすぐにある三重塔。その各所に猫の彫刻が隠れています。何匹いるか、探してみては?
招き猫の奉納には特に決まりはありません。招き猫に込めた願いごとが叶った後に奉納する方が多いそうです。
- 大谿山 豪徳寺
- 拝観時間6:00~18:00(3月下旬〜) 6:00~17:00(9月下旬〜)
- ※寺務所受付は8:00~16:30(夏季は17:00)
- 所在地〒154-0021 東京都世田谷区豪徳寺2-24-7
- お問い合わせ03-3426-1437
まだまだたくさんの招き猫に出会える豪徳寺周辺
豪徳寺の門前町ともいえる豪徳寺商店街や豪徳寺駅前も、たくさんの招き猫に出会うことができます。猫グッズを販売するお店や猫のお菓子を販売するお店、招き猫の像やイラストであふれかえった風景は、まるで招き猫の世界に迷い込んだかのよう。いったいどれだけの招き猫に出会えるのか、数えてみるのも面白いかもしれません。
豪徳寺最寄りの「宮の坂」駅に発着する東急世田谷線。その車両にも、招き猫仕様のものがあります。もしも巡り会うことができたのなら、運気が倍増するかもしれません。
「豪徳寺」駅を降りると、大きな招き猫の像がお出迎え。豪徳寺商店街の柱や看板など、街のいたるところに招き猫の姿があり、思わずカメラを構えたくなります。
招き猫豆知識
今回ご紹介した豪徳寺のほかにも、招き猫の発祥にはいくつかの説があります。招き猫人形の起源として有力視されているのは、今戸焼による丸〆猫(まるしめのねこ)。浅草の今戸で生産されていた今戸焼の一つとして作られていた土人形が原型だという説です。 今日では今戸焼のほか、瀬戸焼、九谷焼、常滑焼、豊岡張り子、伏見人形など、様々な産地で生産されている招き猫ですが、近年は色のバリエーションも豊かです。黒は厄除安全、赤は健康長寿、ピンクは恋愛成就など、色によってご利益が異なるともいわれています。